Year: 2026

【解説】高市内閣が導く「安全保障直結型」知財戦略の全貌

自民党の圧勝と高市内閣の発足を受け、日本の知財実務はこれまでの「権利保護と活用」という枠組みから、「国家安全保障の基盤」へとその性質を大きく変容させようとしています。

日本の知財専門家(弁理士、企業の知財部、法務担当者)が、今後数年で直面するパラダイムシフトについてまとめました。

1. 特許出願非公開制度の「厳格運用」と実務への影響

高市政権下で最も注視すべきは、経済安全保障推進法に基づく「特許出願非公開制度(秘密特許)」の運用加速です。

これまで「軍事転用可能な機微技術」に限定的だった審査の目が、今後はAI、量子、半導体、極超音速技術といった「デュアルユース(軍民両用)技術」へより広範囲かつ厳格に適用される見込みです。

  • 実務上の留意点: 基礎研究段階にある発明であっても、政府の「特定技術分野」に該当すれば、公開が制限され、外国出願に事前承認が必要となります。知財担当者は、技術の「出口」が民生用であっても、その「性能」が安保基準に抵触しないかをこれまで以上に慎重に評価する体制が求められる。

2.セキュリティ・クリアランス制度の本格稼働

2025年に施行された「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」は、高市内閣において日本のR&Dの標準装備となります。

  • 国際共同研究の新ルール: 米国や英国との共同開発において、日本の研究者や知財担当者が機密情報にアクセスするための「適性評価」が必須となる。
  • 知財部門の役割: 企業の知財部門は、単なる書面管理だけでなく、情報漏洩防止(データガバナンス)や研究者のクリアランス状況を管理する、高度なコンプライアンス機能を担うことになる。

3.「戦略的不可欠性」を狙う知財ポートフォリオ構築

高市氏が提唱する「サナエノミクス」の核心は、戦略的不可欠性(Strategic Indispensability)の確保です。「日本がなければ世界が困る」というチョークポイント(急所)を技術で握る戦略です。

  • 重点投資分野: 核融合エネルギー、SMR(小型モジュール炉)、宇宙・防衛、次世代AI。
  • 知財戦略の転換: 汎用技術の「数」を追う出願から、特定の重要技術における「標準化」と「クローズド戦略(秘匿化)」を組み合わせた、国家戦略と連動したポートフォリオ構築が推奨されます。政府による強力な財政支援(危機管理投資)も、この戦略に沿ったIPプロジェクトに集中投下されることが予想される。

4. 技術流出防止策の「実力行使」

「みなし輸出」規制の徹底や、サプライチェーン全体を通じた技術漏洩防止(ITT:Intangible Technology Transfer管理)が強化されます。

  • サプライチェーン・オーディット(取引先監査): 特に半導体や重要部材の供給網において、コンポーネント単位での知財漏洩がないか、サプライヤーに対する監査圧力が強まることが予想される。

知財専門家が今なすべきこと

高市内閣の知財戦略は、「グローバルな信頼(Trusted Framework)」を維持するためのコストを要求します。

  • 「デュアルユース」の感度向上: 自社の発明が「兵器」に関わらなくても、そのスペックが安全保障上のリストに該当しないか、法務・開発部門との連携を深める。
  • 海外出願プロセスの見直し: 秘密特許制度による「待機」のリスクを想定し、国際出願(PCT)のタイミングや優先権主張の戦略を再構築する。
  • 官民連携情報のキャッチアップ: 高市政権下では内閣府(経済安保事務局)が司令塔となります。特許庁だけでなく、内閣府が発する最新の「特定技術分野」の更新情報をリアルタイムで把握することが不可欠になる。

「守るべき技術を、国家レベルの盾で守る」。この強力な方針は、日本の知財力のプレゼンスを世界に示す好機であると同時に、実務家にはこれまで以上に責任と専門性が求められるということを認識する必要があります。

AUTM 2026 Annual Meeting に参加します!

恵泉国際特許事務所(Keisen International Patent Office)および、技術移転・知財ライセンシングを専門とするジャパン・テクノロジー・グループ(Japan Technology Group)は、2026年2月に米国シアトルで開催される AUTM 2026 Annual Meeting に参加いたします。本会合には、両組織を代表して矢口太郎弁理士が出席し、大学・研究機関・企業・投資家など、世界各国の技術移転関係者との情報交換および意見交換を行う予定です。

AUTM Annual Meeting は、大学発技術の社会実装、国際的な技術移転、知的財産の活用・収益化を主題とする、実務志向の国際会合です。本会合への参加を通じて、恵泉国際特許事務所およびジャパンテクノロジーグループは、日本の大学・研究機関・企業の皆さまに対する国際的な知財・技術移転支援を、より一層強化してまいります。

AUTM Annual Meeting とは

AUTM Annual Meeting は、AUTM(Association of University Technology Managers)が主催する、大学・研究機関における技術移転(Technology Transfer)および産学連携、知的財産の事業化をテーマとした年次国際カンファレンスです。米国を中心に、世界各国から大学・研究機関の技術移転機関(TLO)、企業の研究開発・オープンイノベーション担当者、スタートアップや投資家、特許・ライセンス・知財戦略の専門家が一堂に会します。

本会合の大きな特徴は、単なる情報共有や事例紹介にとどまらず、実際の技術ライセンス、共同研究、事業化につながる具体的な議論やネットワーキングが行われる点にあります。学術色の強い学会とは異なり、「研究成果をどのように社会に届け、どのように価値へと転換していくか」という実務的視点を重視していることから、大学発技術の活用や国際的な知財戦略を検討する関係者にとって、極めて重要な機会となっています。

AUTMについて

AUTMは、大学・研究機関における技術移転および知的財産マネジメントの専門家によって構成される、国際的な非営利団体です。1974年に米国で設立されて以降、大学の技術移転機関(TLO)を中心に、研究機関、病院、政府系研究所、企業、投資家、知財・ライセンスの専門家など、世界中の多様な関係者が参加する組織へと発展してきました。

現在、AUTM は技術移転分野において最も影響力のある国際団体の一つとされており、大学発技術の実用化・事業化を担う実務家コミュニティの中核的な役割を果たしています。その活動は米国国内にとどまらず、欧州やアジアを含む国際的な連携にも広がっています。

矢口弁理士は、過去この会合に15回以上参加しています。

大学発技術の社会実装を支える AUTM の役割

AUTM の最大の目的は、大学や研究機関で生み出された研究成果や発明を、社会に還元し、経済的・社会的価値へと結び付けることにあります。そのため、単なる知的財産の保護にとどまらず、特許ライセンス、共同研究、スタートアップ創出といった実践的な技術移転活動を重視しています。

具体的には、技術移転実務に関する教育プログラムの提供、契約交渉や評価手法に関する知見の共有、成功事例や統計データの蓄積・公開などを通じて、技術移転の質と効率を高める取り組みを行っています。AUTM は、技術移転を「個別の経験や属人的なノウハウ」に依存させるのではなく、国際的に共有可能な実務知識として体系化する役割を担っています。

AUTM Annual Meeting の実務的な特徴

AUTM Annual Meeting は、AUTM の活動の中核をなす年次イベントであり、教育・ネットワーキング・実務連携のすべてが高度に融合した場です。多数のセッションやワークショップでは、特許ライセンス交渉、技術評価、スタートアップ設立、産学連携の最新動向など、実務に直結するテーマが扱われます。

また、本会合の大きな特徴として、参加者同士の1対1ミーティングや非公式な交流の機会が豊富に設けられている点が挙げられます。オンラインのネットワーキングシステムはAUTM Connect(https://connect-v3.jujama.com/AUTM-2026-Annual-Meeting)と呼ばれるもので、これにより、単なる情報収集にとどまらず、実際の技術導入やライセンス、共同研究へと発展する具体的なネットワークが行われます。AUTM Annual Meeting は、「議論する場」であると同時に、「実務が動き始める場」として位置づけられています。

日本の大学・企業にとっての AUTM の意義

近年、日本の大学・研究機関や企業においても、研究成果の社会実装や国際展開への関心が高まっています。一方で、海外、とりわけ米国や欧州における技術移転の実務や契約慣行は、日本とは異なる点も多く、十分な理解や経験がないままでは円滑な連携が難しい場合もあります。

AUTM Annual Meeting は、こうした国際的な技術移転実務を、現場の当事者同士が直接学び、意見交換できる貴重な機会です。日本の大学・研究機関にとっては、自らの技術を海外でどのように位置付け、活用していくべきかを考える上で重要な示唆を得る場となり、企業にとっては、海外大学の有望技術や連携先を探索する実践的な場となります。

恵泉国際特許事務所およびジャパンテクノロジーグループでは、AUTM への参加を通じて得られる知見とネットワークを、日本の大学・研究機関・企業の皆さまの国際的な知財・技術活用支援に活かしてまいります。

AUTM 2026 参加の目的

恵泉国際特許事務所およびジャパンテクノロジーグループが AUTM 2026 Annual Meeting に参加する主な目的は、国際的な技術移転および知的財産活用の実務動向を把握し、日本の大学・研究機関・企業の皆さまにとって実効性のある支援につなげることにあります。

具体的には、米国および欧州の大学・研究機関における技術移転の最新トレンド、ライセンス契約や共同研究の実務的な考え方、スタートアップ創出を含む研究成果の社会実装モデルについて、現場の実務家から直接情報を得ることを重視しています。また、海外の大学や企業、投資家とのネットワークを構築し、日本の技術や知的財産を国際的に活用するための具体的な連携の可能性を探ることも重要な目的の一つです。

これらを通じて、単なる情報収集にとどまらず、日本の知的財産・技術を取り巻く課題を国際的な視点から再整理し、より実践的で持続可能な技術移転・知財戦略の構築に役立てていくことを目指しています。

AUTM 2026 参加を通じてご提供できるサポート

AUTM 2026 Annual Meeting への参加を通じて得られる知見やネットワークを活かし、恵泉国際特許事務所およびジャパンテクノロジーグループでは、以下のような支援を提供してまいります。

大学・研究機関向けには、海外での活用を見据えた特許戦略や出願に関する助言、欧米企業の持つ技術ニーズの調査、大学発技術の国際ライセンスの支援、権利行使の支援を行います。特に、米国・欧州の技術移転実務を踏まえた、マーケティング、契約や交渉の考え方について、具体的な事例に基づくサポートを重視しています。

企業向けには、米国・欧州・日本の大学や研究機関が保有する有望技術の探索・評価支援、海外大学との共同研究やライセンス交渉における実務サポートを提供します。研究開発戦略と知的財産戦略を一体として捉えた支援を行うことで、実効性の高い技術導入・事業化を目指します。

さらに、技術移転や知的財産の収益化に関するコンサルティングとして、保有特許や研究成果をどのように活用すべきか整理したい場合や、海外展開を前提とした知財戦略を検討したい場合に、国際的な視点からの助言を行います。日本と海外の制度・実務の違いを踏まえた橋渡し役として、具体的かつ現実的な支援を提供してまいります。

現地での情報交換・意見交換について

AUTM 2026 Annual Meeting 会期中、恵泉国際特許事務所およびジャパンテクノロジーグループを代表して参加する矢口太郎弁理士は、大学・研究機関、企業、技術移転関係者の皆さまと、技術移転や知的財産活用に関する情報交換および意見交換を行う予定です。

大学発技術の国際的な活用、海外大学・研究機関との連携のあり方、研究成果の社会実装に向けた知財戦略などについて、実務的な観点から意見を交わす機会としたいと考えております。AUTM の場を通じて、相互理解を深め、将来的な協力関係の可能性を探ることを目的としています。

お問い合わせ

AUTM 2026 Annual Meeting に関するご質問、または本会合で扱われるテーマに関連する事項につきましては、下記よりお問い合わせください。内容に応じて、後日あらためてご連絡させていただきます。


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